夏の夜の記憶

 

 

「ヒマ〜…」

 

ホロウバスティオン書庫。夏の明るい陽ざしが差し込む中、ユフィはごろごろと窓際で外を眺めている。彼女にしてみれば、自分の故郷がハートレスに襲われたのはわずか8歳のとき。それ以来ハートレスと戦う生活で、今、この平和になった世界では、刺激が足りないだろう。

 

「いつまでもそこにいると、焼けるわよ?」

 

階段下の机で本を読んでいたエアリスが顔をあげ、冗談めかして言った。

 

「いいのー。エアリスと違ってすぐお肌にでる年じゃないもーん。」

「まぁ、失礼ねっ。」

 

二人が笑いあう中、静かに、彼が階段の上から降りてきた。

 

「ねぇねぇ、なんかおもしろいことないー?スコール。」

 

ユフィがぴょいっと窓際を離れ、レオンの側に寄ってきた。

 

「…ないな。こっちが教えて欲しいぐらいだ。」

 

そっけなく答え、本を探しに壁のような本棚群の中を歩く。

 

「あ〜あ。なんかおもしろいことないかなぁー。」

 

再び窓にもたれかかり、ユフィが溜息をついた。退屈なのはレオンも同じ。8年、ハートレス相手に闘い、この世界について調べて来た。平和になったのはありがたいことだし、心の底から願っていたことなのだが。

ヒマを持て余し、朝から昼過ぎまではトレーニング、その後は書庫で読書、というのを毎日繰り返していた。

 

(たまには、遠出してみるか…)

 

手に取ったどこかの国の冒険記をめくりながら、何となく、どこへ行こうかと考えていると、ふいに扉の開く音がして顔をあげた。

ユフィとエアリスも音に気付いて扉の方を見やる。

 

「なぁんだ…クラウドかぁ…」

「……悪かったな。」

 

半分レオンの口まねをしながら、クラウドが部屋に入ってきた。

(当たり前だが)闘技場にいたときのような重装備でなく、袖無しの白いサマーセーターにジーンズ、という出で立ち。黒のブラウスに黒のジーンズというレオンとは対象的だ。

 

「…スコール。少しいいか?」

「え。めっずらし〜。自分からスコールに話しかけるなんて。」

 

レオンに話しかけているにも関わらず、ユフィが横からちょっかいをだす。

クラウドはレオン以上に無口だった。エアリス以外に自分から話しかけることはあまりなく、同じく口数の少ないレオンとの会話にいたっては、普段ほとんどない。

 

「別にかまわないが?」

「…付いてきてくれ。」

 

クラウドはそれだけ言うと、さっさと部屋を出ていった。

 

「少し出てくる。」

 

二人にそう言い残してレオンも後を追った。

 

 

 

 

××××××××××

 

 

 

 

城外へ出ると、クラウドが二台のディトナ(バイク)を用意していた。

 

「ちょっと遠出しないか。」

「今からか?」

「あぁ。」

「…行き先は?」

「ついてからのお楽しみ、だな。」

 

ヒマを持て余し、そのうち遠出してみようか…とちょうど思っていたのだ。断る理由はない。黙ってディトナにまたがりエンジンをいれた。

 

 

 

 

××××××××××

 

 

 

 

薄暗くなった空の下、ディトナをクラウドの案内で走らせていると、急に視界開け、見覚えのある場所にたどり着いた。

 

「ここは…」

「…昔、よく遊んだだろ。」

 

そこは幼い頃、シドがよく自分たちを連れてきてくれた白い浜辺。夏になると決まって、みんなで花火をしていた。ちょうど、今ぐらいの時間だ。

 

「…で、ここで何かあるのか?」

「ちょっとな。」

 

クラウドは含み笑いを浮かべると、どこからか取り出した銃で、空へ発砲した。

 

「……?」

 

数十秒後、対岸の島から一筋の光が空へと飛び、はじけた。

 

「………クラウド…!」

「…気に入ったか?」

 

夏の夜空に広がる、”HappyBirthday”の文字。それに続く”SquollLeonhert”。

 

「どうよ!!シド様特性花火!!!」

 

対岸でシドが得意そうに叫ぶ。

 

「どうせ忘れてたんだろ。自分の誕生日。」

「…悪かったな。」

「言うと思った。」

 

クラウドと次々と上がる仕掛け花火を見ていて、急に思い出す。

 

「……すまない。アンタには俺から何もしてないのに。」

 

今日、8月23日はレオンの誕生日。しかしその12日前、8月11日はクラウドの誕生日だ。昔一緒に誕生日パーティを開いた事がある。

自分の誕生日はもちろん、クラウドの誕生日も忘れてしまっていた。

 

「いいさ。俺も誕生日過ぎてから気が付いたし。」

 

もう一度、レオンがすまない、と謝った時。

 

「ハッピーバースディ!クラウド!スコール!」

 

最後の大・仕掛け花火が上がり、”HappyBirthday””CloudSquoll”の文字が夜空に浮かぶ。

 

「全く…」

「…シドらしいな。」

 

 

 

 

「誕生日、おめでとう。スコール。」

「ありがとう。アンタもな、クラウド。」

 

 

 

 

 


***あゆむさんからのメッセージ***

「お誕生日おめでとう。エアリスやユフィとつるむのもいいけど、
たまには男同士もいいかな、なんて思って書きました。
気に入ってもらえたなら幸いです〜。」

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あゆむさんから頂きました、お誕生日SSです!!

そうです、クラウドも8月生まれなのですよね〜v
あれっ?と言う事はクラウドも獅子座!おぉー!(何が)
レオンもクラウドもお誕生日おめでとう!!
忘れずクラウドも一緒に祝ってくださったあゆむさんに感謝です☆
ありがとうございましたvv


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